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どこまで知ってる? 紙の話

わたしたちの生活にも身近な「紙」について、みなさんはどこまで知っているでしょうか?
今回は印刷用の紙を中心に、意外と知られていない紙のアレコレについて説明していきたいと思います。

紙ってなに?

広辞苑では、『植物などの繊維を膠着させて製した薄片』が紙であり、『その用途のために使う紙』が用紙であると説明されています。
簡単に言ってしまうと、紙を使用用途に加工したものが用紙になるわけです。

さらに、用紙は材料や製法、厚みなどの違いから和紙、洋紙、そして板紙に分類されます。
和紙は日本特有の紙で、コウゾ・ミツマタ・ガンピなどを主要原料とし、主に手漉きによって作られたものを指します。
一方の洋紙はパルプを主原料とし、抄紙機で製造されたものが中心です。
板紙は段ボールに代表される厚みのある紙のことを指し、包装用途で多く用いられています。

言葉の意味を知っていると、紙販売店に「◯◯洋紙店」という屋号がある理由がわかりますね。

もちろん和紙・洋紙・板紙それぞれにさらに細かな分類があるのですが、すべて説明しようとするとキリがないので、ここからは主にオフセット印刷で使用される印刷用紙のことを中心に紹介していきます。

用紙の単位

寸法
印刷用紙の規格には、加工後のサイズを示す仕上寸法と、加工前の用紙に使われる原紙寸法があります。
A4判やB5判といった、おそらく多くの人にとって身近であろう表記はこのうちの仕上寸法にあたります。
A判はドイツ発祥の国際規格、B判は美濃紙由来の国内規格に則ったものですが、どちらも縦横の長さが1:√2という共通点があります。
これは白銀比と呼ばれる比率で、長辺をさらに二等分して出来上がったものも、それぞれ辺の比率が1:√2になる特徴をもっています。
半分に切るだけで同じかたち(相似)の紙を作れるため、無駄なロスが出ません。
何気ないように思えて、実はよく計算されたサイズなのです。

標準規格サイズ

A列(mm)B列(mm)
01189×8411456×1030
1841×5941030×728
2594×420728×515
3420×297515×364
4297×210364×257
5210×148257×182
6148×105182×128
7105×74128×91
874×5291×64

一方、印刷で使用されるのは原紙寸法の用紙です。
広く使われている46判、B判、菊判、A判のほか、包装紙で使用されることの多いハトロン判、板紙の規格であるK判、L判などがこれにあります。
また、それぞれの原紙(全裁)を半分に断裁したものは半裁と呼ばれ、これをさらに半分にしていくことで四裁、八裁と変化していきます。

原紙サイズ

原紙寸法寸法(mm)
四六判1091×788
B判1085×765
菊判939×636
A判880×625
ハトロン判1200×900
板紙L判1100×800
板紙K判940×640

重量
印刷用紙には、同一銘柄でも複数の厚さが存在します。
1枚あたりの厚さは6μmから30μmと大変薄く、厚さを基準に区別するのは難しいため、取引には1000枚あたりの重さを表す「連量」が用いられます。

「連」というのは印刷用紙の取引単位で、1000枚で1単位を表します

米坪(g/㎡)四六判B判菊判A判紙厚(μm)
52.345㎏43.5㎏31㎏28.5㎏6.5
64.055㎏53㎏38㎏35㎏8
81.470㎏67.5㎏48.5㎏44.5㎏9.5
104.790㎏87㎏62.5㎏57.5㎏12.2
127.9110㎏106㎏76.5㎏70.5㎏15
157.0135㎏130.5㎏93.5㎏86.5㎏18.3
209.3180㎏-125㎏-24

※上質紙の規格表。同一銘柄でも6~8種類の厚さ(重さ)が用意されています。

流れ目
用紙の単位というわけではありませんが、印刷用紙を理解する上で寸法・重さと同じくらい重要なのが「目」です。
これはパルプ繊維の流れる方向を表すもので、用紙の長辺に対して平行に入っているものを縦目、短辺に対して平行に入っているものを横目といいます。

この目に逆らって加工すると、折り目が曲がったり開きにくい本になったり、最悪の場合は製品にもなりません。
そのため、紙の流れ目を守ることは印刷する上で非常に重要になります。

まとめ
寸法、重量、流れ目は用紙の基本情報です。
実際に印刷用紙を購入すると、銘柄に加えてこれらの情報が必ず記載されています。
たとえば「しらおい キクY 76.5」と書いてあった場合は、しらおいが銘柄、キクが原紙寸法(菊判)、Yは横目を指し、76.5が連量という具合です。

わたしたちが在庫として紙を保管するときも、外側にこれらの情報を必ず書いています。
……どうでもいい話ですが、縦目のTと横目のYは見間違えやすいため、手書きのときは小文字で書くのが無難です。

印刷用紙の種類

製紙メーカー
印刷用紙の種類をお話しする上で重要になってくるのが製紙メーカーです。
同一グレードの用紙を購入する場合でも、各製紙メーカーから販売している無数の種類から選ぶことになります。

  • 王子製紙株式会社
  • 日本製紙グループ
  • 大王製紙株式会社
  • 三菱製紙株式会社
  • 北越コーポレーション株式会社
  • 中越パルプ工業株式会社
  • レンゴー株式会社
  • 特殊東海製紙株式会社
  • リンテック株式会社

上記のように、メジャーな製紙メーカーだけでもこれだけの数があります。
しかし、一般消費者はもちろん、わたしたち印刷会社もメーカーから直接購入することはできません。
他の業種と同様に、一次卸二次卸(販売店)があるのです。

●一次卸・商社

例)国際紙パルプ商事・新生紙パルプ商事・竹尾・日本紙通商・日本紙パルプ商事・平和紙業・丸紅紙パルプ商事・三菱紙販売……(五十音順)

※(株)竹尾さんは自社の見本帳を販売していたり、特殊紙の取扱が多かったりすることから製紙メーカーと間違われることがありますが、商社です。

●二次卸・三次卸

二次卸・三次卸になってくると区別がかなり曖昧になってきます。
一次卸がメーカーの子会社だったりする場合が多く、親会社の用紙しか取り扱わないところがほとんど。
二次卸もメーカーの取扱に得意不得意(値段や時間など)があります。
印刷会社ではさまざまなメーカーの紙を扱うため、三社以上の卸商さんと取引があるのが一般的です。

印刷用紙の分類

非塗工紙印刷用紙(上・中・下)
下級印刷紙
薄葉紙
微塗工紙
塗工紙アート紙
コート紙
軽量コート紙
キャストコート紙
エンボス紙
特殊紙色上質紙
その他特殊紙
情報用紙複写原紙
フォーム用紙
PPC用紙
情報記録紙
その他情報用紙(OCR)

上記の表は印刷用紙を簡単に分類したものです。
一般的に上質紙と呼ばれるのは、JIS規格の「非塗工紙上級印刷用紙A」に該当するもので、メーカーごとにブランドがあります。

例)OKプリンス(王子)、NPI上質(日本)、しらおい(旧大昭和)、ユトリロ上質(大王)、金菱(三菱)、キンマリSW(北越)、雷鳥(中越)etc……

みなさんは細かな紙の違いまで意識したことはないかもしれませんが、同じ種類の同グレードでも、メーカーごとにこれだけの紙があるのです。

一方、上質紙を含む非塗工紙に対し、表面に特殊な塗料が塗布されたものを塗工紙と呼びます。

非塗工紙よりインクの乗りがよく、光沢があるのが特徴ですが、グロス(ツヤあり)、マット(ツヤなし)、ダル(インクが乗るとツヤが出る)と、その光沢度合いはさまざまです。
また、使用される塗料の量でアート紙やコート紙というようにさらに細かく分類されます。(塗工量ではアート紙>コート紙になります)

キャストコート紙はアート紙よりさらに光沢の強い紙ですが、こちらは製造に使用される機械自体が違います。
そのほか、エンボス紙は凹凸加工が施された特殊な紙を指すものです。

おわりに

いかがだったでしょうか。
わたしたちの生活に身近な「紙」について、本当に簡単ではありますが、ざっくりと紹介させていただきました。
紙の歴史は非常に長く、日用品から芸術品まで幅広く利用されています。
印刷用紙に限っても、より細かな分類がありますし、ここでは触れていないユニークな紙も挙げればキリがないほどです。
また機会があれば、そんな紙について面白い話を紹介したいと思います。