パソコン用の画像

BLOG

BLOG

練馬にあるけど豊島園


 練馬区にある遊園地、としまえんが1927年から続いた94年間の歴史に2020年8月いっぱいで幕を閉じました。


 わたしは生まれたときから練馬区民なので、徒歩15分ほどで行ける距離にあったその遊園地はとても身近な場所でした。
 小学生の頃は年間フリーパスの「木馬の会」に入っていて、毎年夏休みともなれば友達と連れだってそこのプールに通いつめたものです。
 アトラクションもまた思い出深く、当時に稼働していた乗り物にはほぼ全て乗っていたと思います。


「アフリカ館」の不思議な安堵感

 一番印象に残っているのはやはり「アフリカ館」。としまえんというと真っ先にあのライドを思い出します。ジープを模したシマウマ柄のライドに乗って、大型のセットの中に敷かれたレールの上を自動的に進むアトラクションです。
 乗車口の背景にはエジプトのアブ・シンベル大神殿の巨像が並んでいて、空席になって流れてきたジープに乗り込み、吸い込まれるようにして暗い入り口の角を曲がると、そこにもエジプトの壁画が。当時はエジプトがアフリカにあることもわからず、なんでエジプト?と思っていました。
 エジプトを抜けると、槍と盾を手にした絵に描いたようなアフリカの人々が立ち並び、彼らに通されるようにしていよいよジャングルの中へ。暗い森の中ではけたたましい動物の声が響き、生い茂った木々の間には実際に水を張った池やた水しぶきを立てる滝が見え、それらの中に紛れるようにしてさまざまな動物の姿がありました。
 頭上を豹が走り抜け、突進してくる象に驚いていると、風景は唐突に空港のエントランスへと変わり、マネキンが「さようなら」と繰り返しながら手を振って、つかの間のアフリカ旅行は終わります。

 ほとんどルーティーンのようなもので、としまえんを訪れる度にそのアトラクションには乗っていたと思います。終始暗く、どこか荒涼としていてアフリカの明るい部分は皆無でしたが、お化け屋敷ほど緊張することも無く、子供心に適度な興奮を得られるライドだったのだと思います。

落ち着くライド?「アストロライナーX10」

 もう一つ、印象深かったアトラクションが「アストロライナーX10」。横たわる円筒状のロケットの形をした比較的小型のアトラクションで、中に入ると例えようのない独特なにおいがしたのをよく覚えています。内容はというと前部にあるスクリーンに映し出される特撮映画に合わせて、ロケットの車体が縦に横に動くというものでした。
 映像は記憶では3パターンあったと思うのですが、宇宙へ飛び立ち、帰ってきた後になぜか巨大なアリ(かどうかはおぼろげですが)に襲われて終わるという今思えば笑ってしまうような映画が上映されていたのがほとんどだったと思います。
 「サイクロン」や「ブラワーエンジン」といったローラーコースターや「フライングパイレーツ」などのアトラクションももちろんよく覚えていますが、基本的には午前中にプールで散々泳いだ後にアトラクションを回っていたため、激しめのライドよりもただ座っていられるようなものに乗ったり、園内のゲームコーナーで普通のゲームセンターでもできるようなアーケードゲームで遊んでいました。

夏休みの記憶を映す「としまえん」

 夕方には家に帰り、夜にはとしまえんから上がる花火をベランダで眺め、床につけば流れるプールに揺られていた感覚を反芻しながら、いつの間にか眠りに落ちる。
 子どもの頃の夏休みの思い出は、としまえんと、田舎にある祖母の家と、宿題に追い込まれるというこの三つの記憶にほぼ集約されているように思います。

 中学を過ぎたあたりから徐々に足は遠のき、併設されたシネコンに行くことはあっても、その先にある昔なじみの遊園地を訪れることはすっかり途絶えて、気付けば30年ほどの月日が経っていました。
 最近になって、テレビのバラエティ番組のロケ地に使われているのを目にしたのですが、ちらほらと見覚えのある箇所はあるものの、園内がだいぶ様変わりしている事に驚きました。
 それでも、久しぶりに行ってみたいなぁという心が芽生えた矢先に、世間はコロナの渦中に。ほどなくして、としまえんが閉園するというニュースを耳にしました。

 結局、閉園までに再び訪れることは叶わなかったのですが、調べてみると自分の記憶にあるようなアトラクションのほとんどは老朽化などを理由に稼働を終えており、思い出を辿れるような風景はとうに少なくなっていたようです。

 噂では、新たにハリー・ポッターのテーマパークが建設されるらしいとのことですが…。まだ人気のあるコンテンツとはいえ、1巻が発売されたのはほぼ20年前。若干の今更感に加えて、最近の原作者の発言が物議を醸しており、思い入れのある地の行き先に少し不安が募ります。

 あまりにも身近で、そこに在り続けることが当たり前だと思っていたとしまえん。多くの楽しい思い出を与えてくれた事への感謝と、寂しさが尽きません。としまえんの関係者の皆さま、94年間、本当におつかれさまでした。ありがとうございました。