「城オヤジ」の登城日記 その伍
私、城オヤジが城好きになったきっかけについてお話しましょう。
それが今回紹介する「日本最古の天守」を持つ、愛知県犬山城。
小学生の頃(それまで城には全く興味がなかった)私の自宅の本棚にあった『日本の城』を何気なく読んでいると、「日本で一番古い天守閣は犬山城なんだ」と城好きだった父親に教わりました。けれど、当時から福井県丸岡城、長野県松本城なども「一番古い天守閣」の候補として名乗りを上げていました。これで城オヤジ少年はがぜん興味が湧きました。調べ進めてみると、さまざまな説が唱えられているらしいと。それぞれ明確な証拠もなく、どの城の本を読んでみても結局「諸説あり」という但し書きに突き当たることとなりました。
しかし・・・今年。使用されている木材から科学的な測定が行われ、築城時期が割り出され、日本最古の天守であることが築城から約440年の時を経て発表されたのです!
【伍の城】国宝五天守閣最終回! 天下人たちが喉から手が出るほど欲しがった、愛知県犬山城
この城の特徴のひとつは、天守入口。古い時代の城は防御力が弱いので、入口を穴蔵式(天守台石垣の穴蔵の階段を登り天守内に入る構造)にして、横の付櫓(右側にチラッと屋根と窓が見えてます)から天守入口に迫る敵を直接狙撃することで外敵からの攻撃に備えていたと言われてます。これは鉄砲伝来前の至近距離戦の知恵なんです。
また、この城には殿様気分を体感できる特別な場所があります。それは「廻縁」(最上階のベランダ)です。国宝天守で出られる廻縁はここだけという特別な造りになっています。高欄(ベランダを囲む手摺)も付いており誰でも廻縁をぐるっと一周できます。水捌け対策のためか、廻縁の床(無垢の板貼り)は外側に傾斜しており、外に飛び出しそうな感覚がスリル満点。登城時にはぜひ、廻縁に出て殿様気分に浸ってください!
2018年から2019年の二年間をかけて保存修理工事が行われ、特に多数の来場者で摩耗していた天守内階段が補修されました。
使用した檜は新材で、踏み板が白くなり古城に合わない! との指摘もあるようですが、やっぱり安全第一ですよね。
なお、この画像は2015年登城時の修繕前のものです。(確かに当時、とても滑りやすかった印象が残っています)
この甲冑は、江戸時代城主だった成瀬家の家臣のものと言われています。
甲冑もこの頃になると凝った煌びやかな装飾が目立ってきます。武士は戦で功績をあげ、恩賞や地位を得て出世します。戦場で目立ちアピールするために、各武将ごとに個性豊かな特徴のある甲冑が作られたのです。
色褪せてはいますが、目の前で見るとやはりレプリカとは迫力が違いますね。
三英傑と呼ばれる、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。
この三人ともが、犬山城を戦のキーポイントと考えた局面があったと言われています。
果たして天下人の三人は、歴史のどの場面で犬山城を欲しがっていたのか。
< 信長 > 尾張統一の争いにて、対立一族の居城であったのがこの犬山城。これを攻略後、勢力を急拡大させ天下をほぼ手中に。
< 秀吉 > 小牧・長久手の戦い。川を越えての進軍時、これを睨んでいたのが犬山城に陣取る織田信雄・徳川家康連合軍。このままではどうにも不利と考えた秀吉は、船を操る船頭を買収し、夜中に川を渡り奇襲を仕掛けます。犬山城奪取に成功したことで家康を屈服させ、天下人へ。
< 家康 > 秀吉の死後2年を経て、関ヶ原の戦いへ駒を進めた家康。西軍(石田軍)最前線基地が奇しくもこの犬山城でした。大軍で威圧し落城させ、この勢いで関ヶ原の合戦に勝利。
木曽川の畔の険しい崖の上に建つこの城は、当時の交通の要衝。武将たちの激しい戦場であった美濃、尾張、三河の地域にあり、遠く広く周囲を見渡せる好立地で、必ず手中に収めたい城でした。まさに喉から手が出るほど欲しい城で、数々の天下分け目の戦で犬山城がターニングポイントになっていました。ちなみにこの画像は「廻縁」からの撮影です。(右下に写っているの手摺が「高欄」)
犬山城の歴史で最大の特徴は、101年間も個人所有(江戸時代城主 成瀬氏)だったというところでしょうか。
廃藩置県により廃城となった際、櫓や城門といった天守閣以外の構造物は取り壊され、天守閣の修理や整備を条件に政府から成瀬家へと譲渡されたあとは、2004年まで個人所有が続き、現在では財団法人(理事長は成瀬家末裔の方)の所有になっています。
明治、大正、昭和、平成と四時代にわたって個人所有するのは並大抵のことではなく、地震・戦争・台風と幾度となく危機が襲い掛かってきたそうです。
何気なく目にする城の多くは、多様な難を乗り越え、この時代まで受け継がれてきたものばかり。この犬山城も新たな研究・調査・発見があり、2018年には城山一帯の城跡が国史跡に指定され、現在でも進化を続けています。
これにて「国宝五天守閣」シリーズはおしまい!
今日まで立派に保存していただいた、先人の情熱と尽力に思いを馳せてみませんか。